36協定
労働基準法で定められている労働時間(1日8時間/週40時間)を超えて従業員に勤務させる場合に、労使協定を締結することで、労働時間の規制を解くことが可能となります。労総基準法第36条はこの例外について定めており、そのための労使協定を36協定(さぶろくきょうてい)と言います。
2018.03.19

    裁量労働制は労働者にとって損?得?裁量労働制とはどんなものかを知ろう

    最近、ニュースで耳にすることが多くなった「裁量労働制」という言葉。その内容や意味、具体的にはどのような働き方なのかご存知ですか?裁量労働制は労働問題を解決するための対策として有効なのでしょうか?労働者にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか?

    1.裁量労働制について

    裁量労働制とは、労働基準法で定められている制度のひとつです。実は1987年の労働基準法改正の段階で導入されています。最近のニュースで話題となっていますが、30年近く前から定められている制度なのです。

    裁量労働制は簡単に説明すると「労働者が自分の働き方や勤務時間を自分で管理できる制度」です。とは言え、「じゃぁ、私は毎日5時間働きます!」と言えばそうなるという訳ではありません。

    (1)裁量労働制は「みなし労働時間」という扱い

    裁量労働時間は労使間で行われる労使協定によって労働時間を定めます。労使協定によって定められた労働時間を「みなし労働時間」、その時間は労働しているものと「みなす」という形になります。

    もう少しわかりやすく言うと、みなし労働時間を8時間と設定した場合、5時間働いた日も10時間働いた日も8時間働いたとみなして給与計算が行われるという事になります。

    (2)裁量労働制は対象となる業種等が決められている

    自分の仕事の進み具合で早く帰ったり、遅くまで働いたりを自由に決められるという点ではとても魅力的な裁量労働制ですが、すべての人に適用される制度という訳ではありません。裁量労働制の対象となる人は以下のいずれかに該当する場合となります。

    ① 専門業務型

    デザイナーやエンジニア、弁護士や税理士、経営コンサルタント、コピーライターや編集、研究開発などの専門分野の業種の場合には「専門型裁量労働制」の適用を受けることが可能です。

    専門型裁量労働制は全部で19種類の業務が対象となります。

    ② 企画業務型

    企業の管理部門などが「企画業務型裁量労働制」の適用を受けることが可能です。いわゆるホワイトカラーと言われる人たちが対象となります。

    2.裁量労働制の時間外労働に関する注意点

    (1)みなし労働時間が法定労働時間内かどうか

    労働基準法には法定労働時間(1日8時間/週40時間)が定められています。原則としてこの法定労働時間を超えた部分に対し、時間外手当を支給することになっています。

    裁量労働制を導入すると、労使協定によって「みなし労働時間」を定める必要があります。

    みなし労働時間が法定労働時間である8時間以内の場合には、実際に働いている時間が8時間を超えている場合でも時間外手当を支給する必要はありません。

    しかし、みなし労働時間が8時間を超えている場合には、実際に働いている時間が8時間以内であっても、法定労働時間を超えたみなし労働部分に対して時間外手当を支給する必要があります。

    (2)深夜手当や休日手当は発生する

    深夜手当とは夜10時~翌朝5時までの時間帯の労働に対して支給される手当です。休日手当は法定休日に出勤した場合に支給される手当です。この2つは法律によって定められている手当となり、裁量労働制の場合にも適用されます。

    裁量労働制の適用を受けることができる業種は、集中して業務を行ないたいという理由から深夜や休日など、他の人がいない時間帯に働きたいというケースも多く見られます。

    雇用する側は、深夜手当や休日手当を支給しなければならなくなりますので、深夜や休日を意図的に狙っているという場合には、注意や指導を行う必要があるでしょう。

    【深夜手当・休日手当の割増率】

    (3)所定休日の出勤が割増になることもある

    所定休日に出勤し、業務を行った場合、その週の所定休日を除く労働時間が40時間を超えている場合には時間外手当を支給する必要があります。

    3.裁量労働制を導入する際に注意すべきこと

    (1)労使間での労使協定が必要

    裁量労働制は会社側、労働者側が勝手に導入することが出来る制度ではありません。

    裁量労働制の適用を受けることができる業種であることが前提となり、労使間で労使協定を結ぶ必要があります。締結した労使協定は労働基準監督署に届出を行う必要があります。

    【労使協定によって定める内容】

    (2)従業員を公平に判断することができる体制を構築が必須

    労働時間を個人で管理させる形となるため、進捗管理方法の確立や、成果に対する評価方法を明確にする必要があります。

    また、意図的に深夜や休日を狙って仕事をすることで給与が増えることになると、他の従業員から不満が生まれる可能性があります。裁量労働制の場合には、原則として深夜や休日の業務は禁止するなどルールをしっかりと定めておく必要があります。

    4.裁量労働制と似ているようでちょっと違う2つの制度

    (1)フレックスタイム制

    勤務時間を自由に設定できるという点では「フレックスタイム制」と似ていますが、

    フレックスタイム制は出勤時間が自由に設定できるようになっているため、労働時間は実働時間となります。裁量労働制はみなし労働時間が労働時間となるため、労働時間の扱いが異なります。

    (2)みなし残業制度

    みなし残業制度は、予め残業があるものとみなして残業代を支払う制度です。

    決められた時間までの残業代は給与と一緒に支払われることになるため、残業が発生してもしなくても一定の残業代が支給されます。

    みなし労働やみなし残業など似ているため、混同しがちですが裁量労働制とみなし残業は全く異なる制度だということを理解しておきましょう。

    5.裁量労働制の場合でも、残業代の請求は出来る?

    「2.裁量労働制の時間外労働に関する注意点」でご説明したように、裁量労働制の残業代は、みなし労働時間が法定労働時間以内か以上かによって異なります。

    みなし労働時間が8時間以上に設定されている場合には、8時間を超えている部分が残業手当の対象となります。

    もし、「裁量労働制だから残業代はでない」と会社側に言われた場合には、みなし労働時間が何時間になのかを確認してみましょう。

    また、深夜手当や休日手当は裁量労働制であっても支給される手当です。裁量労働制だからという言葉で諦めてしまわずに、自分の契約がどのようになっているのかをしっかりと確認しましょう。

    まとめ

    裁量労働制は労働者にとって、仕事の状況に併せた自由な働き方ができるというメリットがあります。しかし、労使協定の内容はご自身の雇用契約の内容をしっかりと理解していないと、「裁量労働制だから」という理由で実は支給されるはずであった手当をもらえていなかったという事になりかねません。

    仕事の状況に併せてご自身の働き方をマネジメントする以上は、ご自身の給与形態や契約形態についてもしっかりと理解しておく必要があります。裁量労働制だけどもしかしたら残業代もらえたのでは?と思われた方は、是非、専門家に相談してみてくださいね。

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