残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2017.07.20

    未払いの残業代の計算方法

    未払いの残業代を請求したいと考えている人は、まず未払いの残業代がいくらなのか把握する必要があります。

    残業代を計算する時には、まず給与明細書に記載された基本給をベースにして、残業代の時間単価(1時間あたりの単価)を算出します。

    そして実労働時間を正確に確定したら、次に法定内残業(法律で規定された時間内の残業)、法定時間外労動(法律で規定された時間を超えた残業)、深夜残業、休日労働などに細かく振り分けて、算出した時間単価をそれぞれの時間帯の割増率に従って、計算します。

    ここでは、残業の基本的知識や実労働時間の振り分け、実際の残業代の計算方法などについてご紹介します。

    1.残業とは

    残業代を計算するためには、まず「そもそも残業とは何か」について知っておく必要があります。

    残業には「法定時間外労動」と「法定内残業」の2種類がありますので、それぞれの意味をしっかりと押さえておきましょう。

    (1) 法定時間外労動と法定内残業

    * 法定時間外労動

    労働基準法では「1日8時間、1週間で40時間」を法定労働時間とし、8時間を超えて働かせる場合は、1時間以上の休憩を入れなければならないことを規定しています。

    そしてこの「1日8時間、1週間で40時間」を超えた法定時間外労動(残業)については、割増賃金を支払わなければならないとしています。

    割増賃金は、「1時間あたりの賃金×1.25」で計算します。

    見落としがちですが、会社命令で早朝出勤した場合でも、法定労働時間の「1日8時間」の範囲を超えたら、法定時間外労動(残業)になります。

    * 法定内残業

    法定内残業とは、「1日8時間、1週間で40時間」を超えてはいないものの、会社が就業規則等で定めた所定労働時間(定時)を超えた場合の残業のことです。

    法定労働時間を超えていない法定内残業の場合には、法律上は割増賃金を支払う必要はなく、1時間あたりの通常賃金が支払われていればよいとされています。

    (2)時間単価の算出

    残業代を計算するためには、まず時間単価(1時間あたりの給料)を算出する必要があります。

    時間単価は、基礎賃金から各手当等を引いた額を月平均所定労働時間で割って計算します。

    「時間単価」=「※月によって定められた賃金」÷「月平均所定労働時間」

     

    ※月によって定められた賃金とは、支払われている給与から、以下の諸手当を差し引いたものです。

    * 家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当 など

    * 臨時に支払われた賃金(結婚手当など)

    * 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)

     

    (3)実労働時間の確定

    実労働時間とは、会社によって拘束されている拘束時間から、休憩時間(昼休みの1時間など)を除いた労働時間のことで、賃金の支払い対象となる労働時間のことをいいます。

    残業した時間は、実労働時間から所定労働時間を引いた時間なので、まずこの実労働時間を確定させる必要があります。

    「残業時間」=「実労働時間」-「※所定労働時間」

     

    ※所定労働時間とは、会社が就業規則や労働契約などで定めた労働時間のこと。

    所定労働時間は、法定労働時間である「1日8時間、1週間で40時間」の範囲で定められる必要があります。

    実労働時間を立証するためには、タイムカード、入退館記録などの証拠が必要となりますが、個々の事情によってはパソコンのログイン・ログアウト時間やメールの送信記録などが証拠となる場合もあります。

    何が実労働時間を立証するための証拠になるかについては、早めに弁護士に相談してアドバイスをもらっておくとよいでしょう。

    (4) 割増率の把握

    前述したとおり「1日8時間、1週間で40時間」を超えた法定時間外労動(残業)については、割増賃金を支払わなければなりませんが、この割増率は残業した時間帯などによって異なります。

    * 法定時間外労動

    法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき、時間外労働が限度時間(1か月45時間、1年360時間など)を超えたときは、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。

    なお、時間外労働が1か月60時間を超えたときは50%以上の割増賃金を支払う必要があります(※中小企業は、当分の間適用除外)。

    * 法定休日

    会社は労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければなりません。

    なお例外として、毎週少なくとも1回の休日を付与するのが難しい場合には、4週間に4回の休日を与えることもできます(変形週休制)。

    そしてこの法定休日(週1日)に勤務させたときは、35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

     

    * 深夜労働

    深夜労働とは、所定労働時間内であるか否かを問わず、22時から5時までの時間帯における労働をいいます。

    会社は、労働者に対して22時から5時までの間に勤務させたときは、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。

    ただし深夜割増賃金も含めて、所定賃金が定められているということが明らかな場合には、深夜割増賃金を請求することはできません。

    2.残業代を実際に計算する

    これまで述べてきたように、残業代を計算するためには、実労働時間を立証するための証拠を用意したうえで実労働時間を正確に計算し、法内残業と法外残業を仕訳し、時間帯に応じた割増賃金を計算する必要があります。

    これまでの計算方法に従って、モデルケースで残業代を計算してみましょう。

    (1) モデルケース1

    所定労働時間が9時~17時(休憩1時間)で、19時まで残業をしたケースを見てみましょう。

    このモデルケースでは、1日の実労働時間のうち、7時間を超える8時間までの1時間が法内残業時間、8時間を超える分が法外残業時間となり、法内残業は時価単価分、法外残業は25%の割増率で残業代を算出します。

    * 9時~17時……所定労働時間

    通常賃金

    * 17時~18時……法内残業

    法内残業の時間数×就業規則等で定める1時間あたりの単価

    * 18時~19時……法外残業

    時間外労働の時間数×1時間あたりの賃金×1.25

    (2)モデルケース2

    9時始業・深夜1時半終業・休憩1時間

    9時から深夜1時半まで仕事をし、そのうち休憩が1時間である場合、午後10時から深夜1時半までの3時間半は深夜労働となります。

    したがって午後5時から午後6時までは法内残業、午後6時から午後10時までは法外残業となり、この時間帯については、25%の割増率で計算し、午後10時から深夜1時半まではそこに深夜労働の割増率が加算され、50%で計算することになります。

    * 9時~17時……所定労働時間

    通常賃金

    * 17時~18時……法内残業

    法内残業の時間数×就業規則等で定める1時間あたりの単価

    * 18時~22時……法外残業

    時間外労働の時間数×1時間あたりの賃金×1.25

    * 22時~25時半……法外残業+深夜労働

    時間外労働の時間数×1時間あたりの賃金×(1.25+1.25)

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