残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2017.07.20

    残業代請求するときの証拠保全申立の手続き

    残業代を請求するためには、就業規則やタイムカードなどの証拠が大変重要ですが、これらの資料を手に入れずに退職してしまった場合には、就業規則やタイムカードなど残業代を請求する際に必要となる証拠を収集するために「証拠保全申立ての手続き」の利用をする場合があります。

    残業代を請求するためには、タイムカードや労働管理ソフトの記録、就業規則や労働契約書、給与明細など、さまざまな証拠が必要となりますが、これらの資料をきちんと入手してから退職するのは難しい場合がほとんどです。

    しかし退職後にこれらの資料を退職後に会社側に提示するよう求めても、対応してくれない会社も多く、悪質な会社の場合には証拠資料を破棄したり隠匿したり改ざんしてしまうこともあるのです。

    そこで、このような危険性がある会社の場合には、証拠保全手続きの利用を検討する必要があります。

    ここでは、証拠保全手続きの知識や利用方法、申立書の記載方法についてご紹介します。

    1. 残業代で必要なのは「証拠」

    残業代を請求するためには、タイムカードや労働管理ソフトの記録、就業規則や労働契約書、給与明細など、請求できる残業代が未払いであることを証明するための、さまざまな証拠が必要となります。

    これらの資料がなくても残業代を請求できるケースもありますが、有力な証拠は手元に準備しておくに越したことはありません。

    タイムカードや労働管理ソフトの記録などの資料を、会社が保管している場合には、それらを提示するよう求めることができます。

    しかし残業代を請求されると、証拠資料を毀棄したり、隠匿してしまう会社もあります。

    また、残業を立証できる有力な資料が手元にないまま退職してしまうこともあるでしょう。

    そのような場合には、労働者は内容証明郵便などで会社側に請求する前に、証拠保全や仮差押などの手続きを利用することも検討する必要が出てきます。

    (1) 証拠保全手続きの利用

    残業代を請求するときには、まず内容証明郵便で支払い請求の意思表示をするのが一般的です。しかし内容証明郵便を送付すると、悪質な会社の場合、手元に保管していたタイムカードを破棄したり、就業規則を隠匿したりすることがあります。

    相手方の会社がこのように悪質で、証拠資料を毀棄・隠匿する危険性がある場合には、内容証明郵便で支払い請求の意思表示をする前に、証拠保全手続きを利用することを検討しましょう。

    (2) なぜ証拠が必要か

    会社に残業代を請求するためには、まず残業代があったことを立証しなければなりませんし、さまざまな資料をもとに実労働時間から残業代を計算する必要があります。

    たとえば就業規則などで就業時間についてどのように規定されているかを確認し、タイムカードや労働かで残業がどのくらいあるのかを1日ごとに立証し、未払いの残業代がいくらあるのかを細かく計算する必要があるのです。

    実労働時間を証明するための証拠としては、タイムカードのほか、業務日報、パソコンのログイン・ログオフの時間記録、シフト表などがありますが、これらを会社側に請求しても、任意に提示してもらえないことも多く、最悪の場合、せっかくのこれらの証拠を破棄・隠匿・改ざんされてしまうケースもあります。

    そこで会社側に必要な証拠を破棄・隠匿・改ざんを回避し、資料を収集する手段のひとつとして「証拠保全の申立て」があります。

    (3) 証拠保全の申立書の記載事項

    証拠保全の申立ては、書面で行う必要があり、申立ては検証物(タイムカードや業務日報など実労働時間を証明するための証拠類)の所在地を管轄する地方裁判所または課に裁判所に対して行います。

    証拠保全の申立書の主な記載事項は、以下のとおりです。

     

    * 書面のタイトル

    * 申立人

    * 代理人がいる場合には、代理人の住所・氏名・送達場所

    * 相手方の住所・氏名・送達場所、申立をする裁判所

    * 年月日

    * 申立人、代理人の記名・押印

    * 申立人の住所・氏名、送達場所

    * 代理人の住所・氏名、送達場所

    * 相手方の住所・氏名、送達場所

    * 申立人の電話番号・FAX番号

    * 代理人の電話番号・FAX番号

    * 申立ての趣旨

    * 申立ての理由として証明すべき事実および証拠保全の事由

    (4) 証拠保全の申立書の記載例

    前述した記載事項を踏まえて、証拠保全の申立書の記載例を紹介します。

     

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    証拠保全申立書

     

    平成○年○月○日

     

    ○○簡易裁判所民事部 御中

     

    申立人代理人弁護士 山田○太郎

     

     

    〒130-0001 東京都品川区品川○丁目○番○号

    申立人 佐藤○太郎

     

    〒130-0001 東京都千代田区千代田○丁目○番○号

    ○○法律事務所(送達場所)

    上記申立人代理人弁護士 山田○太郎

    電話 03-○○○○-○○○○

    FAX  03-○○○○-○○○○

     

     

    〒130-0001 東京都江東区高砂○丁目○番○号

    相手方 株式会社○○物産

    上記代表取締役 鈴木○太郎

     

    証拠保全申立 事件

    貼用印紙類  500円

     

     

    申立の趣旨

    相手方の事務所および店舗(住所 東京都江東区高砂○丁目

    ○番○号○ビル)において、相手方は保管・所持する別紙物件

    目録の物件について検証をする。

    相手方は、上記検証物を証拠調べ期日において提示せよ

     

     

    申立の理由

    第一 証明すべき事実

    申立人が、相手方における各所定労働日の各所定労働時間を

    超えて労働したが、これに対する所定の時間外賃金が支払われ

    ていない事実

     

    第二 証拠保全の事由

    1 当時者

    (1)相手方は、○○の仲介及び販売を目的とする株式会社

    であり、従業員は正社員12人である。

    (2)申立人は、平成20年4月20日、相手方に雇用期間の定め

    のない正社員として入社したが、平成27年8月2日相手方

    を退職した者である。

     

    2 申立人の労働条件等

    (1)所定労働時間

    9:00~18:00(休憩1時間)

    (2)所定休日

    土日祝日、年末年始6日間、夏期休暇5日間

    (3)所定賃金

    月給25万円

    なお、上記以外に残業代として固定残業手当が毎月3万

    円、交通費が毎月8000円支給されている。

    賃金の支払日 毎月末日締め、翌月25日払い

    (4)業務内容

    商品管理・営業事務・接客等

     

    3 申立人の労働実態

    (1)申立人の労働時間は相手方において、労働管理ソフト

    によって管理されていた。

    (2)相手方は業務量と比較して従業員数が少ないことから

    申立人は連日のように残業を行っていて、残業時間が

    月300時間を超えることもあった。

    (3)しかし相手方が、差残業代として固定残業手当を毎月

    3万円支払うのみであった。

     

    4 保全の必要性

    (1)申立人は相手方を退職後、千代田労働基準監督署に残

    業代の未払いがあることを申告していて、千代田労働基

    準監督署は相手方に対して労働管理ソフト等を提出する

    ように指示した。相手方は、千代田労働基準監督署の指

    示に応じて労働管理ソフトの写しを提出したが、和解に

    応じる姿勢を見せず、これまで不誠実な対応を続けている。

    そこで申立人は、相手方を被告として○○簡易裁判所

    に対して未払い賃金(時間外手当)請求の訴えを提起す

    べく準備中である。

     

    (2)相手方の保持している賃金台帳(給料台帳・給与台帳)

    は、時間外手当の時間単価を算出するために必要不可欠

    な証拠である。

     

    (3)これらの資料は相手方の管理下にあり、訴訟となると、

    とりわけ労働管理ソフトについては、毀棄、隠匿する危

    険性がある。

     

    (4)相手方がこれらの資料を証拠保全されることで不利に

    なることはないが、申立人がこれらの資料を立証できな

    くなる不利益は計り知れないものがある。

     

    (5)よって、申立人は、本件申立てに及んだ次第である。

     

     

    疎明方法

     

     

     

    添付書類

     

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    (5)証拠保全の申立の流れ

    証拠保全を申立てると、裁判官面接が行われ、不備や補充が必要な場合には、追加の資料や説明が求められます。

     

    証拠保全の予定日時が決まると、申立代理人は証拠保全当日に同行するカメラマンの手配をします。

    証拠保全の際には必ずカメラマンを同行しなければならない、という訳ではありませんが、後々証拠とするためにも同行してもらったほうがよいでしょう。

     

    証拠保全の当日は、裁判官、書記官、申立代理人、カメラマンが同行して証拠保全を実施します。裁判官が証拠保全の手続きについて説明をして、証拠保全の対象物を相手に提示してもらいます。

    裁判官が検証を実施し、カメラマンが撮影します。

    2.残業代請求の時効は2年

    残業代請求権の消滅時効は2年です。

    この2年という時効は、毎月の給料日の翌月から始まります。

    つまり毎月の給料日に2年前の残業代が時効にかかって消滅してしまっているのです。

     

    これまで述べてきたように未払いの残業代を請求するための証拠を揃えたり、証拠保全の手続きの利用を検討するなど、準備しなければならないことが多々あります。

    早目に弁護士に相談するなどして、未払い残業代を取り戻すための行動を起こすようにしましょう。

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