残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2018.03.10

    固定残業代(いわゆるみなし残業)の問題点|未払い賃金の計算方法

    近年、ブラック企業において残業代の支払に、みなし残業や固定残業代という方法を取り入れる企業が増えてきています。そもそもみなし残業とはどういったものなのか、なぜブラック企業がこの方式を導入しているのか、また受け取ることが出来る残業代の計算方法をご紹介します。

    1.固定残業代(みなし残業)とは

    そもそも固定残業代とはどういったものなのでしょうか

    (1)残業代が固定給に含まれている

    固定残業代は残業代が固定給に含まれている雇用契約の事を言います。しかし労働基準法ではこのみなし残業に厳しい制約を設定しています。

    以下がその制約です。

    ① 労働者に周知させること

    雇用者は労働者に、みなし残業を導入することを書面で通知する義務があります。

    また新規採用者に対しては労働契約に固定残業制度を導入することを明記しておかなければなりません。これを行っていない場合違法になります。

    【募集を行う際の募集要項や求人票も明確に表示させる必要がある!】

    ② 基本給と固定残業代が分けられていること

    基本給がいくらで、固定残業代がいくらかが明確にされていないと、労働者はどの程度残業代が未払いなのか計算することが出来ません。(計算方法は後述します)この二つをしっかり区別することが義務付けられています。

    ③ 固定残業時間を超えた場合と越えなかった場合の扱い

    設定された固定残業時間より長く働いた場合には、超過分を別途残業代として払わなければなりません。逆に、設定された固定残業時間よりも残業時間が短かった場合でも固定残業代は全額払わなければなりません。

    ④ 固定残業時間は月45時間以内にすること

    裁判所が月45時間を超える固定残業時間の設定は無効とした判決を出しています。

    ⑤ 最低賃金以上を設定すること

    例えば東京都で残業代5万円(月50時間分を含む)としている場合、時給1,000円となりますが、平成29年度の東京都の最低賃金が958円で、それに時間外労働で1.25倍すると1197.5円で上記の残業代設定は違法となり、不足分を請求することが出来ます。

    最新の最低賃金は厚生労働省HPより確認することが出来ます。

    地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省HP)

    2.残業代の計算方法

    ここでは残業代の計算方法をご説明します。計算してみた結果より少ない額しか会社から支払われていない場合は、未払い賃金として請求することが出来ます。

    (1)固定残業代制度を導入している場合の残業代の計算方法

    ① 本来の残業代の計算方法

    本来の残業代の計算方法は月給から手当を引いた基本給の時給に時間外労働手当の1.25をかけたものとなります。計算式は下のようになります。

     

    ② 未払いの残業代の計算方法

    未払いの残業代の計算方法は以下のようになります。

    これが未払い賃金となり会社に請求できる金額です。

    (2)固定残業代制度を無効だとした場合の残業代の求め方

    固定残業代制度を無効だとして訴えた場合に払われるべき残業代の計算式は以下のようになります

     

    違法に固定残業代制度を導入している会社にはこちらの金額を請求することが出来ます。

    3.未払い賃金の取り戻し方

    2では未払い賃金の計算方法をご説明しました。3では未払い賃金があった場合、どうやったらそれを請求できるのかをご説明します。

    (1)会社に請求書を送る

    「未払い賃金が○○円あるのでこれを請求します」といった書面の請求書を内容証明郵便で会社に送付するか、弁護士に相談して請求書を作成・送付してもらうことで取り戻すことが出来ます。

    (2)労働基準監督署に相談する

    (1)で未払い賃金を受け取れない場合は、労働基準監督署に訴えに行きましょう。行政指導が入ることで会社も動かざるを得なくなります。

    (3)裁判・労働審判を起こす

    法律を根拠に会社を訴える事も出来ます。弁護士を通して裁判を起こすか、個人で労働審判を行うか選ぶことが出来ます。

    4.未払い賃金を請求するために必要な証拠

    会社はできれば未払い賃金を払いたくありません。しっかりと証拠を用意することが大切です。以下に何が有力な証拠になるかご紹介します。

     

    5.まとめ

    固定残業制度は本来労働者にメリットがある制度です。しっかりと仕組みを理解して会社が違法な給料の支払いを行っている場合には権利を主張してしっかりと未払いの賃金を回収しましょう。

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